■ 有機概念図簡易計算機 ■
有機概念図『Excel用有機概念図計算シート』の使用方法分子と分子の相互作用
※本ページはサイエンスアゴラ2008の企画『分子の世界をアートとエコロジーから見る』で紹介予定の教育用コンテンツです。

パソコンやiPad・iPhoneで使える有機概念図簡易計算アプリを相馬 稔さん(プロジェクトCANI,新潟高度情報専門学校)に開発していただいて公開しました。


有機概念図簡易計算機(低分子)
★2色のピンポン玉・スーパーボール・ビー玉やレゴブロック,色つきシールなどで分子の秘密に迫ってみよう!
分子の部品 実際の値 概数(20を基準) 概数(●=20)
※複数ある場合の繰り上がり・繰り下がりは無視
有機性
(油)
無機性
(水)
C (すべての炭素) 20 0 1 0  
ベンゼン環 0 15 0 1  
環 (ベンゼン環以外)   0 10 0 1  
-Cl (塩素) 40 10 2 1 ●●
>C=O 0 65 0 3   ●●●
-COOH 0 150 0 8   ●●●●●●●●
-N< (アミン:-NH2など) 0 70 0 4   ●●●●
-NO2 70 70 4 4 ●●●● ●●●●
-O- (両方 C に結合) 0 20 0 1  
-OH 0 100 0 5   ●●●●●
-S-,-SH 40 20 2 1 ●●

◎炭素は最初に全部数えるので,他の炭素が入っている部品では数えなくてよい。
◎大きい部品の方を選び,重複しては数えない(例:-COOH を数えたら >C=O-OH は数えない)


その他の入力時の注意事項


【練習問題1】以下の分子についての数との数を求めてみよう!


[1][2]
アルコールとフェノール
[3] 新規麻薬(脳内物質例のアドレナリン),[4] ダイオキシン類



さてこれは上の[1]〜[4]のうち,どれを計算した結果でしょう?
の数との数は手前のシールでも同じです。


【練習問題2】以下の分子についての数との数を求めてみよう!(一部問題1と重複)


[1][4] ベンゼン環を含む化合物例,[5][7] 神経伝達物質・薬物より
解答2



2010年ノーベル化学賞,鈴木カップリングで合成される降圧剤バルサルタン(valsartan)で計算(2010/11/04)
分子モデルで見るノーベル賞参照


有機概念図簡易計算機(タンパク質)
★2色のレゴブロックなどであらかじめ各アミノ酸の●の個数だけ色別に接着して残基名をつけておき,それらをつなぐとよい。
アミノ酸 特性基 R 概数(20を基準) 概数(●=20)
※複数ある場合の繰り上がり・繰り下がりは無視
O
(油)
I
(水)
I/O
Ile イソロイシン 80 0 0 4 0 ●●●●  
Leu ロイシン 70 0 0 4 0 ●●●●  
Val バリン 50 0 0 3 0 ●●●  
Ala アラニン 20 0 0 1 0  
Phe フェニルアラニン 140 15 0.107 7 1 ●●●●●●●
Pro プロリン 60 10 0.167 3 1 ●●●
Met メチオニン 100 20 0.200 5 1 ●●●●●
Cys システイン 60 20 0.333 3 1 ●●●
Trp トリプトファン 180 130 0.722 9 7 ●●●●●●●●● ●●●●●●●
Tyr チロシン 140 115 0.821 7 6 ●●●●●●● ●●●●●●
Lys リシン 80 70 0.875 4 4 ●●●● ●●●●
Gly グリシン 0 0 0 0    
His ヒスチジン 80 152 1.900 4 8 ●●●● ●●●●●●●●
Arg アルギニン 80 190 2.375 4 10 ●●●● ●●●●●●●●●●
Thr トレオニン 40 100 2.500 2 5 ●● ●●●●●
Glu グルタミン酸 60 150 2.500 3 8 ●●● ●●●●●●●●
Gln グルタミン 60 200 3.333 3 10 ●●● ●●●●●●●●●●
Asp アスパラギン酸 40 150 3.750 2 8 ●● ●●●●●●●●
Ser セリン 20 100 5.000 1 5 ●●●●●
Asn アスパラギン 40 200 5.000 2 10 ●● ●●●●●●●●●●

    
〔中〕赤と緑で“水と油”;身近なものによる分層教材の例(Log Pをポケットに!参照;右の図はクリックで関連ページへ)
上層:緑色のマーカーでプラシート上に厚く塗り乾いてからオクタノールまたはサラダオイルで溶かして。
下層:温湯に食紅を溶かして。
※上層をサラダオイルにしたものを用いて公民館サイエンスカフェ『生命を支える美しい分子たち』(2012/03/03)で話をしました。


参考:アミノ酸および特性基の親水性・疎水性
アミノ酸 hydropathy
index
特性基 R log P 酸性・塩基性 極性・非極性 Cleftの分類 等電点
O I I/O
Ile I イソロイシン 4.5 80 0 0 -1.70 中性 非極性(疎水性) Aliphatic 6.02
Leu L ロイシン 3.8 70 0 0 -1.52 中性 非極性(疎水性) Aliphatic 5.98
Val V バリン 4.2 50 0 0 -2.26 中性 非極性(疎水性) Aliphatic 5.96
Ala A アラニン 1.8 20 0 0 -2.85 中性 非極性(疎水性) Aliphatic 6.00
Phe F フェニルアラニン 2.8 140 15 0.107 -1.38 中性 非極性(疎水性) Aromatic 5.48
Pro P プロリン -1.6 60 10 0.167 -2.54 中性 非極性(疎水性) Pro & Gly 6.30
Met M メチオニン 1.9 100 20 0.200 -1.87 中性 非極性(疎水性) Aliphatic 5.74
Cys C システイン 2.5 60 20 0.333 -2.49 中性 極性(中性) Cysteine 5.07
Trp W トリプトファン -0.9 180 130 0.722 -1.05 中性 非極性(疎水性) Aromatic 5.89
Tyr Y チロシン -1.3 140 115 0.821 -2.26 中性 極性(中性) Aromatic 5.66
Lys K リシン -3.9 80 70 0.875 -3.05 塩基性 極性(塩基性) Positive 9.74
Gly G グリシン -0.4 0 0 -3.21 中性 非極性(疎水性) Pro & Gly 5.97
His H ヒスチジン -3.2 80 152 1.900 -3.32 塩基性 極性(塩基性) Positive 7.59
Arg R アルギニン -4.5 80 190 2.375 -4.20 塩基性 極性(塩基性) Positive 10.76
Thr T トレオニン -0.7 40 100 2.500 -2.94 中性 極性(中性) Neutral 6.16
Glu E グルタミン酸 -3.5 60 150 2.500 -3.69 酸性 極性(酸性) Negative 3.22
Gln Q グルタミン -3.5 60 200 3.333 -3.64 中性 極性(中性) Neutral 5.65
Asp D アスパラギン酸 -3.5 40 150 3.750 -3.89 酸性 極性(酸性) Negative 2.77
Ser S セリン -0.8 20 100 5.000 -3.07 中性 極性(中性) Neutral 5.68
Asn N アスパラギン -3.5 40 200 5.000 -3.82 中性 極性(中性) Neutral 5.41
※hydropathy indexは以下を参照;Kyte and Doolittle, J. Mol. Biol., 157, 105-132(1982)
※log Pは
On-Line Log P Calculation掲載の実験値
※極性・非極性はChimeのProtein選択様式と関連(参考ページ
《参考》1文字アミノ酸配列から各種HTMLデータを作成する秀丸マクロ


アミノ酸残基の疎水性インデックスとI'/O'値の比較(Glyを除く)


Cleft analysisによるアミノ酸分類(データ例:2hkk
Positive Negative Neutral Aliphatic Aromatic Pro & Gly Cysteine
H,K,R D,E S,T,N,Q A,V,L,I,M F,Y,W P,G C


【練習問題3】以下について低分子とそれが結合しているタンパク質中のアミノ酸についての数の比を求めてみよう!


低分子は練習問題1[3]のアドレナリン,囲んでいるアミノ酸は Asn×2,Ile×1,Gln×1,Phe×1(何れも水素原子と二重結合は非表示)
※PDBsumデータ例
2hkkより(画像作成ページ


参考図:(-)-エピネフリン(アドレナリン)の受容体との結合
山川ほか「メディシナルケミストリー 第5版」(講談社)p.25,野崎ほか「創薬化学」(化学同人)p.49


【解説】(執筆中)




“鍵と鍵穴”を親水性・疎水性から考える
※もちろん凸凹の位置も重要ですが,その前にそれぞれの総量の比が同じことが必要条件になります。



アルコールで考える分子の親水性・疎水性(アルコールとフェノール参照)



コカインを含むPDBsumデータ例2pgzより(画像作成ページ
※着色についてはアミノ酸および特性基の親水性・疎水性参照


参考図:コカイン(cocaine)の受容体との結合
山川ほか「メディシナルケミストリー 第5版」(講談社)p.136


【練習問題2の解答】


プロットより簡易計算機による概算値およびExcel計算シートによる数値から求めた「無機性/有機性」値が近いことがわかる!
※log P(
赤字は計算値)の数値は以下より
Interactive LOGKOW DemoOn-line Lipophilicity/Aqueous Solubility Calculation Software
※参考:Log Pをポケットに!

環境ホルモンとして疑われている化合物のlog Pの有機概念図よりの推算
分子と分子の相互作用参照


「生活環境化学の部屋」ホームページ有機概念図Jmol版「分子の学習帳」