環境ホルモンとして疑われている化合物の分子情報 (4) → (1)(2)(3)
= 3次元構造活性相関手法(3D-QSAR)の紹介 =

→ 関連資料:有機概念図で見る環境ホルモン関連分子
→ 関連資料:CASTpデータで見るエストロゲン受容体 [NEW!]


図1 1ere中の17β-estradiol(図のクリックで拡大)
※詳細はPDBデータのLigand結合部位分子と分子の相互作用参照

 2001/12/27,IP WEBに『化学物質の環境ホルモン作用で182物質確認−−経産省と厚労省が測定成功』の記事が出ました。文中の“レポーター遺伝子法(レポータージーンアッセイ)”による成果で,同手法に触れている情報例としては以下のようなものがあります。
 このうち,*印の資料「内分泌かく乱作用に関する試験法開発状況について」で紹介されている試験法は以下の4つになります(**が続報;表2-2の分子モデルを有機概念図で見る環境ホルモン関連分子で参照可)。
  1. 3次元構造活性相関手法(3D-QSAR)
  2. 受容体結合試験/レポーター遺伝子アッセイ
  3. スクリーニング試験
      3-1 子宮増殖アッセイ
      3-2 ハーシュバーガーアッセイ
      3-3 改良28日間反復投与毒性試験(改訂TG407)
  4. 2世代繁殖毒性試験
 上記1の3D-QSARでは,“内分泌かく乱物質のコンピュータによるスクリーニングを可能にする目的で、蛋白−リガンドの結合性をシミュレーションにより予測する方法”として,以下の計算手順で行なった検討結果が紹介されています。青字が使用プログラムです。
1) Mizutani, Tomioka & Itai, J. Mol. Biol. 243, 310 (1994)
2) Takamatsu & Itai, Proteins, 33, 62 (1998)

 さらに,p.4の表1には「自動ドッキング計算」および「蛋白・リガンド構造を含めた構造最適化」に用いた受容体として以下の4種が示されています(Ligand分子を取り除いて利用;2002/06/10の資料で3ertを追加して5種)。

表1 標的としたエストロゲン受容体構造
 PDB ID  Ligand Note
1ere * 17β-Estradiol Agonist
Brzozowski et al. Nature 389, 753 (1997)
3erd * Diethylstilbestrol Agonist
Shiau et al. Cell 95, 927 (1998)
3erd-2 * Diethylstilbestrol 3erdのMet 421の配座を変更
1err * Raloxifene Antagonist (selective agonist)
Brzozowski et al. Nature 389, 753 (1997)
3ert ** 4-Hydroxytamoxifen Shiau et al. Cell 95, 927 (1998) 389, 753 (1997)

 以下に,受容体についての参考画像を示します。


図2 1ereの画像データ例.左がLigandの17β-Estradiolを表示した場合で,中央は非表示.
*印資料p.3図2を参考に作成.原報は,Brzozowski et al., Nature vol.389 pp.753-758, 1997)



図3 標的として用いられたエストロゲン受容体構造例の画像.下段青字がPDB ID,紫文字がLigand.



図4 表1の各エストロゲン受容体の共通site部分(siteは特性基の有機概念図I/O値順の着色).
右端は4データの重ね合わせ(ligandは1ereが球棒表示で他はスティックモデル,siteは針金モデル).
PDBデータのLigand結合部位


標的として用いられたエストロゲン受容体の分子モデル例(初期表示は1ere)
CASTpにより,PDB ID または Keyword Search(estrogen で検索)によりポケット部位探索可能
→ 利用例:CASTpデータで見るエストロゲン受容体 [NEW!]

Cartoon  Backbone  2oStructure  Termini
Ligands表示  OFF
Water表示(一部不可)  OFF

Protein選択  Ligand選択
空間充填  球棒モデル  スティック  OFF
CPK  amino
Dot Surface表示  OFF
水素結合表示(細)  同(太)  OFF
Specular  OFF |  光量30%  OFF
軸表示  OFF |  Bounding Box表示  OFF
背景・黒  背景・灰  背景・白
画像をクリップボードへコピー

1ereのchain A
   → オリジナルの1ere情報Chime分子
3erdのchain A,C
   → オリジナルの3erd情報Chime分子
1errのchain A
   → オリジナルの1err情報Chime分子
3ert
   → オリジナルの3ert情報Chime分子

amino表示の凡例
ASP GLU CYS MET LYS ARG SER THR PHE TYR
ASN GLN GLY LEU VAL ILE ALA TRP HIS PRO

※上記データは何れもProtein Data Bankの公開データから,1つまたは2つのchainを切り取って作成したものです.詳細はオリジナルデータ情報を参照してください.
 また,リンクしてある“Chime分子”表示ページはEric Martzによるもので,モデルの表示変更に用いたスクリプトも同氏のものを一部参考にしました.

標的として用いられたエストロゲン受容体中のオリジナルのLigand(初期表示は17β-Estradiol)

空間充填  球棒モデル  スティック  OFF
Dot Surface表示  OFF |  ラベル表示  OFF
Electrostatic Potential  Lipophilic Potential  OFF
specular  OFF |  光量30%  OFF
軸表示  OFF |  bounding box表示  OFF
原子球・白  OFF(CPK)
背景・黒  背景・灰  背景・白
画像をクリップボードへコピー
17β-Estradiol
Diethylstilbestrol
Raloxifene
4-Hydroxytamoxifen



「分子の形と性質」学習帳 | 「生活環境化学の部屋」ホームページ