◆ ナイロンと抗うつ薬 ◆
抗うつ剤の分類(Chime版)Jmol版


 1998〜1999年に朝日新聞日曜版に連載された『100人の20世紀』で取り上げられた数少ない化学者に,クロロプレンゴムとナイロン(ナイロン66)を合成したカロザース(Carothers,1896〜1937)がいます(1998/07/12付)。高校の化学の教科書でもナイロン繊維合成のところで登場しますが,『自殺したナイロンの父』と題された記事にはナイロン繊維が商品化される前年に自殺したことについて詳しく書かれていました。うつ病であったことが主因とされ,抗うつ薬の発明がもう少し早ければ自殺しないですんだのではないかとあります。
 初期の抗うつ薬は,六員環・七員環・六員環と環が3つ並んだ三環系(性)抗うつ薬が主流で,その代表であるイミプラミンが合成されたのは1958年のことです。
 現在では,人間の様々な“こころの病”に有効な薬が多数合成され,社会全体に大きな恩恵をもたらしてくれています。しかしその裏で,医師の指導も受けずにそれらの薬を入手して服用し,こころや精神を弄ぶ風潮が少なからず出てきているのは残念でなりません。薬には副作用があって極めて危険なだけでなく,服用者が錯乱状態になって悲惨な事件などを引き起こしていることを思い返して欲しいと思います。


ナイロン66

[参考] 高分子事典芳香族ナイロン


抗うつ薬の例

分類







空間充填  球棒モデル
Electrostatic Potential  Lipophilic Potential

イミプラミン(imipramine);C19H24N2 〔参考〕

空間充填  球棒モデル
Electrostatic Potential  Lipophilic Potential

アミトリプチリン(amitriptyline);C20H23N 〔参考〕




空間充填  球棒モデル
Electrostatic Potential  Lipophilic Potential

フルボキサミン(fluvoxamine);C15H21F3N2O2 〔参考〕

※SSRI = 選択的セロトニン再取込阻害剤(selective serotonin reuptake inhibitor)


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