◆　化学トピック集 (1)　◆　　化学トピック集 (2)

ページ作成日（随時情報追加）　＆　内容・キー化合物など

1997/06/30〜

※本環境ホルモン情報は，専用ページに移転しました！

1997/11/30

　朝日新聞 1997/11/27 に，ディーゼルエンジンの排気ガス中に含まれる，新発見物質 3-nitrobenzanthrone（3-ニトロベンズアントロン）が，極めて高い変異原性を示すとの記事．
　環境中に存在する代表的な発がん性物質，benzo[a]pyrene（別名：ベンツピレン）よりも変異原性が高いことが，合成 3-nitrobenzanthrone によるエイムス試験により確かめられたとのこと．国立公衆衛生院・京都大学・京都薬科大学の研究グループの発見．

※Chime 版分子モデル（要・plug-in）　／　有機概念図

　NIFTY／FCHEMT/mes/13（「化学の広場」・【有機】会議室）#943〜 では，当該研究室のメンバーも発言されており，この問題が諸外国でも大きく取り上げられていること，3-nitro 体以外にも，1-, 2-, 9-, 11-, 3,9-di, 3,11-di, 3,9,11-tri 体を合成して試験し，3-nitro 体が特に活性が高かったことなどが話題になっています．
　なお，benzo[a]pyrene の発がん機構については，

を参照してください．

1997/09/28

　1997/05/11の話題でも書いたように，清涼飲料水の“ペット”ボトルは poly(ethylene terephthalate) の略称の PET からきています．ところが最近，PET の代わりに PEN というポリマーの利用が始まっています．ポリエステルのはなし／PET と PEN（要・分子表示 plug-in）をご参照下さい．

1997/09/19

　新聞・テレビ・インターネットで，Ｍ社が新しいコンタクトレンズの宣伝を大々的にしています．コンタクトレンズには，“ハード”と“ソフト”があることはご存じの方も多いと思いますが，それぞれどんな素材でできているのでしょう（要・分子表示 plug-in）．

1997/06/28

　1997年7月1日，香港がイギリスから中国に返還．香港がイギリスに統治される原因になったのが、アヘン戦争（1840〜1842）です．“こころ”に絡む薬物が，戦争に原因になったり国の統治にまで影響するとは，考えてみれば不思議なことです．アヘン（阿片）は，ケシ科ケシPapaver somniferum から得られるアルカロイドの混合物で，主成分は以下の通り．

主成分割合／％分子構造分子モデル
（ChemscapeChime版）
モルヒネ5〜25
　　参照
ナルコチン2〜8　C22H23NO7　　−
コデイン0.3〜4
　　参照
パパベリン0.8　C20H21NO4　　−
テバイン0.2〜0.5
　　参照
ナルセイン0.1〜0.4　C23H27NO8　　−
　　　　　　　　　　　　　　※データ引用：化学辞典，森北出版(1981)

1997/06/22

　朝日新聞1997/06/11に，東京理科大の研究グループが，抗がん剤タキソール（taxol；分子表示plug-in“ChemscapeChime”によるモデル参照可能）の新しい合成法（アメリカでは1994年に合成）を開発したとのニュース．八員還の周囲に還構造が３つ付いている複雑な構造で，合成が極めて難しい．
　構造決定も困難を極めてと思いますが，以下の分子モデル（HyperChemで組み立てたもので，構造解析されたものと若干異なる）の組み立ても手間がかかり，最適化計算にかなりの時間を要しました．このような化合物を創造する自然界はすばらしいと思います．
　タキソールはセイヨウイチイの樹皮に微量に含まれる物質で，卵巣がんなどに有効であることがわかっています．融点213〜216℃（分解）．以下のページ・文献も参照して下さい．

1997/06/15

　1997/05/23のNHK朝のニュースで，食品添加物として認可された甘味料，キシリトール（xylitol，別名キシリット Xylit）が取り上げられました．糖アルコールであるキシリトールを甘味料とした虫歯になりにくいガムが続々発売されているほか，歯科医が虫歯を防ぐガムとして処方する例があるとのこと．虫歯は，口内細菌が食べ物の糖などから作り出した酸が，歯のエナメル質を溶かすことによってできます．ところが，口内細菌はキシリトールからは酸を生成できないばかりか，その繁殖も抑制されるそうです．子どもにとっては朗報でしょうか．
　キシリトールはシラカバ等の樹木に含まれるD-キシロースを，還元して得られます．融点93〜94.5℃．

Chime版分子　…　キシリトール ｜ 分子の重ね合わせ(3)／甘味物質の秘密

1997/06/08

　1997/05/28のNHK『クローズアップ現代』は，「狂い始めた体内時計・現代人を襲う謎の睡眠障害」で，現代人の生活様式から体内時計が狂い，体の不調を起こす例が増えていることが特集されました．この中で，メラトニンというホルモンが治療薬の例として取り上げられ，不登校児などにも有効な場合があったと紹介されました．メラトニンは日本や欧米諸国では医薬品に相当するものとして規制されていますが，アメリカでは栄養補助食品として扱われているため，比較的簡単に手に入ります．しかし厚生省の「メラトニン原料と狂牛病」の警告もあり，安易に利用することには問題があります．
　1997/05/02の朝日新聞にも，「脳の薬、ファッションに」というコラムがあり，“現在、メラトニンのように脳や神経の活動にかかわるような機能性食品がファッションになっているところがちょっと不安を感じさせる”と結ばれていますが，「こころ」に絡む薬は決して“食品”ではなく，専門家の指導が不可欠と考えます．

1997/05/11

　本年４月より，「容器包装リサイクル法」（容器包装リサイクル法・データベース参照）が施行されましたが，朝日新聞1997/05/09の記事，『ペットボトル回収は足踏み　−リサイクル法はできたけれど…−』では，全国でリサイクルを始めた自治体は１５％に留まり，ペットボトルが“サイクル”するには程遠い状況です．以下は各自治体の実施例． 東京都　４月から２３台の「ペットボトル回収車」が東京２３区内を回って，スーパーやコンビニの容器を回収（４月だけで６３万本）．容器・飲料メーカーが回収を始めるまでの暫定的処置としている．
［追加情報］　以下も参照して下さい。 横浜市　回収を実施していない代わりに，「再生利用等促進物指定制度」のペットボトルを指定したが，回収業者は乗り気でない．
大阪市　市による分別収集と，小売業者や飲料メーカーなどによる２つのルートでの回収を計画中．また，日本チェーンストア協会関西支部で市内のスーパーなどに回収箱を置くことにしたが，当面はスーパー４０店のみで，コンビニは加わっていない．
広島市　ペットボトル再生工場の建設が決まらなかったため，従来通り，不燃ゴミとして埋め立て．山口県岩国市に繊維メーカーの再生工場が稼働する来春からは，モデル地区で回収を始め，2000年度からは市内全域で実施を予定．
■記事には出ていませんが，私の住んでいる新潟市では４月から市内全域でゴミを６分別回収（新潟市のホームページでも紹介）．ペットボトルなどのプラスチックは新潟プラスチック油化センター（新潟大学・伊東先生のページにプラントの詳細）で油化する計画になっているのですが，完成直後に火災を起こし現在休止中のようです（97/04/30化学工業日報に，先週末発表されたこの火災に関する調査委員会の報告内容；NIFTY／FCHEMT電子会議室情報）．
［追加情報］　1997/05/31朝日新聞新潟版，1997/06/01「市報にいがた」に，新潟市で1997/06/01からペットボトルの店頭回収開始のニュース．市内のスーパー33店と，市役所・地区事務所などを合わせて計50カ所で実施とのこと．委託業者が週に２回程度回収し，再生工場へ送られるそうです．
 　“ペット”は，poly(ethylene terephthalate) という高分子（「まなびの部屋」の高分子事典も参照して下さい）の略称で，以下のように炭素，水素，酸素だけからできています（衣服素材のポリエステルも同じものです）．従ってペットだけ燃焼させれば有害ガスの発生は少ないのですが，他のゴミと混ぜて焼却した場合はその限りではありません．同ページで紹介している高分子の燃焼生成ガスの模式図も，あくまである条件での反応で，燃焼条件によって様々な化合物が発生することに注意する必要があります．

　なお，同日の朝日新聞には，『畑作用ビニール資材の野焼き　−環境壊すが、やめられない／高い回収コストに二の足／代替品は効果に難点−』とあり，農業用に多用される塩化ビニル（他にポリエチレンなど）の個人的な焼却処理が，ダイオキシンの発生も懸念されて問題になっていることが取り上げられています．
［追加情報］　先日のNHK朝のニュースの話題で，1.5リットルクラスの清涼飲料水用のプラスチックボトル（ポリエチレンテレフタレート［PET］製とポリ塩化ビニル［PVC］製；日本では約９：１とのこと）を製品リサイクルするための，分別の新技術の話題．PVCの熱分解温度が低く，PETの融点が高いために，各々の溶融再生時に，PETにPVCが混入していると茶色に変色し，PVCにPETが混入しているとPET部分が白濁するためです．そこで，混ざったまま粉砕してよくこすり合わせた後，正負に帯電（５万ボルト）させた装置の間を落下させると，PETが−側に，PVCが＋側に吸着するという仕組みになっています．これは，異なった電気絶縁体を接触（摩擦）→剥離することによって発生・消滅する電気量の差として観察される“帯電”という現象を利用したもの．いろいろな絶縁体の組み合わせで帯電符号を調べて一覧にしたのが“帯電列”（文献図参照）です．図の通り，PET（図ではポリエステルに相当）とPVCでは，PVCの方が負に帯電することになりますから，上記の装置の＋側に吸着する訳です．帯電列は各固体の表面にどういう原子団が存在しているかで，ほぼ説明できます（高分子の構造や，原子の電気陰性度なども参考にして下さい）．帯電列の離れているものほど帯電が大きくなります．
　冬など，セーターを脱ぐときに放電するのは，着用時に重ね着していた他の繊維と摩擦されているためです．冬は乾燥して繊維に吸着している水分が少なく，電気が逃げにくいという理由などによります．繊維の帯電防止剤は，繊維表面に界面活性剤を吸着させ，水分を保持させるようにしているのです．
［追加情報］　「こねっと・ワールド」の『プラスチックのゴミ処理について』もご覧下さい．

1997/05/03

　日本化学会発行の「化学と教育」（日本化学会入会案内参照）1997年２号に『甘味の化学』，同４号には『ダイエット甘味料』の解説．最近，多くの菓子類・缶飲料に“ノンシュガー”，“シュガーオフ”，“カロリーセーブ”，“虫歯になりにくい”などと謳った製品が多く出てきています（1997/03/30朝日新聞にも『ノンシュガー缶飲料、続々』という記事）．ラクチトール，エリトリトール（エリスリトール），マルチトール，ステビア，パラチノースなど耳慣れない甘味料が使われています．一部の製品には，“この商品には、体内で吸収されにくい特質の甘味原料が含まれています。従って体調によりお腹がゆるくなる場合があります。”といった注意書きが記されたりしています．
　強力な検索エンジンｇｏｏで各甘味料を検索すると，商品情報や消費者の感想など，多くの情報が得られますが，構造式や性質等の詳細情報の発信が少ないように感じられます．そのような中で，横浜国立大学生活情報ホームページには，多数の日常品に関する情報・文献が紹介されており，大変役立ちます．
　なお以下は，上記『ダイエット甘味料』に出ていた図を参考に作成したパラチノース（palatinose）の構造です．同文献には，“消化吸収され栄養分となる一方で，虫歯菌には利用されないため，う蝕性は低い。甘味度0.42（98％純度）。”と出ています．

Chime版分子　…　パラチノース ｜ 分子の重ね合わせ(3)／甘味物質の秘密

1997/04/20

　NHK『生活ほっと』1997/04/18の放送は，「水道水から集団感染」で，昨年６月埼玉県で起こった集団下痢の原因となった原虫“クリプトスポリジウム”が取り上げられました．クリプトスポリジウムは，塩素消毒も無効である上，今のところ有効な治療法が無いことなどが，朝日新聞のシリーズ『新感染症学』 1997/02/14でも紹介されています．
　水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針，水系感染が証明されたクリプトスポリジウムCryptosporidium parvum による集団下痢症，水系感染原因微生物としてのクリプトスポリジウム，検出試薬など，インターネット上の情報もご参照下さい．また環境情報誌『水情報』では，今回の事件に先立って，特集「現代の水系感染症」でクリプトスポリジウムを取り上げ，警鐘を鳴らしていました．
［追加情報］　厚生省のページに，『97/08/29 エイズ患者等免疫不全の状態にある方のクリプトスポリジウム感染予防について』と『「97/08/12 「水道におけるクリプトスポリジウム等病原性微生物対策検討会」の設置について』，『97/08/19 水道水源におけるクリプトスポリジウム等の検出状況について』の情報が出ています．『水道における未規制化学物質等調査研究班の設置について』もご参照下さい．
［追加情報］　1997/10/08，厚生省で『クリプトスポリジウム等原虫類総合対策』が決定され， 1997/12/17 には，『クリプトスポリジウム等の水道水源における動態に関する研究について』が公表されました．

1997/04/06

※本ダイオキシン情報は，専用ページに移転しました！

1997/03/20

　1997/03/13付け朝日新聞に，『リモネンでリサイクル』の記事．柑橘類の皮から抽出したリモネンで発泡スチロールを溶かして容積を減らし，リサイクルしやすくしようという技術の紹介．家電メーカーやスーパーで導入計画が進んでいるとのこと．
　リモネンには，下図のようにd体（右旋性，+；レモン油などに含まれる）とl体（左旋性，-；松葉油・はっか油などに含まれる）があります．dl体は，ジペンテンともいわれ，テレピン油に含まれています．
　ミカンの皮に含まれる成分が，ポリスチレン（分子モデル参照→ Chime版， Java版）を溶かすというのはおもしろいですね．ミカンの皮で発泡スチロールをこすると溶けるそうなので，試してみて下さい．
［追加情報］　朝日新聞 1997/08/28 に続報．上記家電メーカーでは東京で運用を開始．『オレンジＲネット』と名付け，リモネン入りのタンクを積んだ回収車で，都内の５０店を巡回・回収とのこと．発泡スチロールをタンクに投げ込んで羽根でかき混ぜると数分でぼろぼろになり，トラック１５台分が１台で済むそうです．

1997/02/26

　繊維学会誌「繊維と工業」，53巻2号(1997)は，【精製セルロース】特集．ソフトジーンズなどに用いられている今はやりの繊維“テンセル”（商標名；取り扱い方法はここを参照して下さい）は，セルロースを有機溶媒に溶かして紡糸したもの．セルロースの溶媒には以下の，N-メチルモルフォリン-N-オキシド（MMNO）などがあります．

1997/02/07

　新潟県庁のページに，日本海の重油流失事故に関する情報のページが開設されました．ボランティアへの注意事項等の情報があるほか，関係自治体・研究機関へリンクが張られています．NHK重油災害情報もご覧下さい．
　1997/02/07のNHK朝のニュースで，重油中から有害な“2-フルフリルアルコール”が検出されたとのこと（1997/02/08朝日新聞にも関連記事）．おそらく下図の，furfuyl alcohol（国立衛生試験所国際化学物質安全性カードのデータへジャンプ）のことだと思うのですが，他の有害物質も検査中ということなので，除去作業中は保護メガネ・マスクをつけるなどの予防処置をした方がよいと思われます．

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