【2】分子科学計算の例(Chem3Dによる)

 Chem3D(ver.4.0,CambridgeSoft社)では分子力学法のMM2による計算も可能であるが,ここでは主に半経験的分子軌道法プログラムMOPACのAM1またはPM3計算について述べる。なお,計算する分子の原子数が多い場合はMM2計算をしてからMOPAC計算すると時間を短縮することができる。
 分子軌道法計算によって得られる有益な情報には以下のようなものがある。

 以下はこの中の双極子モーメントを構造最適化と同時に求める方法である。

●計算例1 PM3計算による構造最適化と生成熱・双極子モーメントの計算

  1. MOPACメニューからMinimize Energyを選ぶ。
  2. RMSは0.100のまま使用し,TheoryのMethodでハミルトニアンとしてPM3を選択する(図1)。
  3. ProperitiesリストでDipole(双極子モーメント)とHeat of Formation(生成熱;MOPACでは,298K標準状態における気体相の値)を選択する(図2)。複数の因子を選ぶ場合はCTRLキーを押しながらクリックする。
  4. Runボタンをクリックして計算を実行する。計算終了後は分子を任意の形式で保存する。MDL MOL形式で保存すればChimeでの利用が可能である。

 図1

 図2

【計算結果例】

●計算例2 LUMO・HOMOエネルギー計算と軌道の可視化

  1. AnalyzeメニューからExtended Huckel Surfacesを選ぶ。
  2. ViewメニューのMolecular SurfacesサブメニューからMolecular Orbitalsを選ぶ。
  3. OrbitalsリストボックスでHOMOを選んでShow SurfacesボタンをクリックするとHOMOが表示され(図3),LUMOを選んでShow SurfacesボタンをクリックするとLUMOが表示される(図4)。

図3 2-ナフトールのHOMOの例

図4 2-ナフトールのLUMOの例



※参考:Chem3D Version 10.0(2006年購入)によるall-trans-ビタミンAのHOMOとLUMOの表示


●計算例3 WinMOPAC/MOS-Fによる励起エネルギー計算

  1. 計算したい分子をChem3Dで組み立ててPM3計算し,mop形式で保存する。
  2. WinMOPACを起動して分子を読み込む。
  3. EditメニューからZ-Matrixを選択し,表示されたダイアログ中のProgramの項目でMOS-Fを選択する。さらにMethodsで実行したい計算方法(CNDO/Sなど)を選択し,必要に応じてChargeの値を設定する(水中でイオンになっている場合はその価数など)。
  4. CalculationメニューからStartを実行する。
  5. InformationメニューからExcited Statesを選択する。 → Orange IIの計算例(次ページ)


演習例メニュー 分子の組み立て 可視吸収スペクトルとその計算